大手車買取店のガリバーでは、有料オプションとしてクレームガード保証を用意しています。
車の買取時には後から減額されるといったトラブルが実際にあり、不安に感じた人はクレームガード保証に入るべきと考えるでしょう。
しかし、結論から言ってクレームガード保証に入る必要は殆どありません。
なぜなら、査定時に修復歴や不具合などをしっかり伝えておけば減額されることは稀ですし、プロの査定士なら査定結果に責任を持つというのが当たり前だからです。
ここでは、ガリバーのクレームガード保証がいらない理由について詳しく解説し、それでも入ったほうが良いケースを紹介します。
ガリバーのクレームガード保証ってなに?
ガリバーのクレームガード保証とは、簡単に言えば買取額を保証するための保険です。
車の買取では、査定時に分からなかった修復歴やエンジンの不具合などが後になって判明することがあり、査定額の減額や買取額の返金を要求されるトラブルが起きています。
クレームガード保証に入っていれば、万が一後で不具合などが見つかった場合でも、査定額が減額されたり、修理代金を請求される心配がなく、安心して車の売却できるというわけです。
クレームガード保証はガリバーが始めた独自の優良オプションサービスですが、ビッグモーター
も続いて『クレーム安心保障』といった同様のサービスを開始しています。
しかし、このクレームガード保障についてはなぜか両社ともホームページに詳しい案内が記載されていません。
買取の契約時に説明を受けるといったケースが多いので、加入するべきか判断に迷う人も多いです。
クレームガード保証がいらない3つの理由
当サイトではクレームガード保証は不要と結論付けていますが、その理由は以下の通りです。
- ユーザー側に責任はない
- 他社では料金がかからない
- 査定後の減額や返金を求められるケースは少ない
特に1つ目に挙げた『ユーザー側に責任はない』というのが最も大きな理由です。これについては根拠もしっかり示した上で特に詳しく解説していきます。
ユーザー側に責任はない
車の買取時に結ばれる契約書には、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)について必ず書かれており、契約時にも説明を受けます。
車を売る人の殆どは一般の消費者であり、不具合や修復歴などについて隠すつもりがなくても気付かずに見落としてしまうこともあるはずです。
車の買取では、二重査定によって減額されたというトラブルも実際に多く、瑕疵担保責任の説明を受ければクレームガード保証は必要なものだと感じてしまうでしょう。
しかし、瑕疵担保責任を問われるのは、通常買主側に全く過失がない場合です。
そもそも車の買取とは、一般ユーザーからプロに売却を依頼するものであり、査定をする買取店に求められる『一般的な注意力』は通常と異なります。
なぜなら、プロによる査定なら修復歴はしっかり見ればわかるはずですし、不具合も大抵のことは発見できるはずだからです。
つまり、査定後に修復歴や不具合が発覚したというのは、査定時の見落としである可能性が高く、買取店側にも過失があると考えられます。
意図的に不具合や修復歴を隠したのでなければ、一方的に瑕疵担保責任を問われる可能性は低く、クレームガード保証に入らなくても減額や返金に応じる必要はありません。
JPUCや国民生活センターの見解と裁判所の判例
前段で示した内容は筆者の個人的な見解を示したものではなく、実際にJPUC(一般社団法人日本自動車購入協会)や国民生活センターも同様の見解を持っています。
以下はJPUCに寄せられた査定後の減額に対する回答の内容で、ホームページ内に載せられています。
ご売却車両に、中古自動車取引業界における一般的かつ標準的な車両検査(修復歴:一般財団法人日本自動車査定協会が定める基準、走行距離:一般社団法人日本オートオークション協会への照会)において判明しない瑕疵があることが判明したときは、買取事業者はお客様に協議を求めるものとし、両者で充分な協議を行ってもなお合意に至らなかった場合又は協議が不能なときは、売買契約を解除することがあります。お客様は売却車両に、契約書表面に記載された「メーター交換歴」「災害歴」「修復歴」「走行上の不具合」がある場合は、契約締結時に「判明している範囲」でご申告下さい。 一方では、買取事業者は査定のプロであり、通常の注意を払えば修復歴などは発見することができるものであり、 買取事業者側に過失があったとみなされます。-引用元:JPUC【よくあるご質問・相談例】
このように、査定時に発見することができなかった瑕疵が後に判明した場合、協議して契約解除になる可能性があるとはしながらも、買取事業者側に過失があるとの見解を示しています。
また、国民生活センターでも、
契約後の車両の瑕疵を理由にした契約の解除や減額は、原則として認めなくてよい
出典:独立行政法人国民生活センター「増加する自動車の売却トラブル」
としていますし、そもそも契約書に一方的な減額や解約が可能とする条項があることを問題視しています。
もしそのような条項が契約書にあったとしても、消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)によって無効にできるという見解です。
ちなみに、実際に無効になった判例もあります。以下は買取後に修復歴が発覚し、買取店から返金を求められた際に出された裁判所の判断です。
民法570条にいう「隠れた瑕疵」とは,買主が瑕疵のあることを知らず,かつ,知らないことについて過失のない瑕疵をいい,買主に過失がある場合には解除することはできないし,瑕疵の存在を発見したときから1年以内にしか解除権を行使できない。-引用元:近江法律事務所:消費者契約法判例集
このように、例え契約書に瑕疵担保責任についての条項があったとしても、それ自体が不当である可能性が高く、実際には殆ど意味はありません。
もちろんユーザーは、査定時に分かる範囲で不具合や修復歴について伝えることは絶対に必要です。
しかし、それさえしっかり行ってさえいれば、クレームガード保証など不要なことがわかるでしょう。
他社では料金がかからない
クレームガード保証はガリバーやビッグモーター独自のオプションであり、他の大手買取店にはありません。
例えばカーセブンでは、売却時の契約安心宣言というのを掲げていて、いかなる理由でも査定後の減額は一切しないと明記されています。
前段をしっかり読んでいただければ分かると思いますが、ハッキリ言ってこれが普通です。明記していなくても基本的にどの買取業者も減額はできないと考えているでしょう。
ガリバーもクレームガード保証というサービスを始める前は、査定後に修復歴が判明した場合、基本的には担当者の責任になっていたはずです。
つまり、クレームガード保証というのは、一見ユーザーを守る安心のサービスに見えますが、実は業者側を守るためのもので、査定ミスによる損失を減らす保険のようなものといえます。
なぜなら、万が一ミスがあっても多くの人がクレームガード保証に加入していれば損失を補填できるからです。
ガリバーとしては、業界全体に査定後の減額などのトラブルが多いという背景から、他社との差別化を図るという狙いもあったのでしょう。
差別化ができれば顧客の獲得にも繋がり、正に一石二鳥です。業者側にはメリットばかりのクレームガード保証ですが、本来料金のかかるサービスではないので、ユーザー側に入るメリットは殆どありません。
査定後の減額や返金を求められるケースは少ない
これまでの理由を聞けば、ガリバーやビッグモーターのようにクレームガード保証を扱う買取業者が悪者に見えてきてしまうかもしれません。
しかし、ガリバーやビッグモーターは業界の1位、2位を争う大手企業です。
査定後に不具合や修復歴がみつかるということは、査定士のレベルが低いと言っているようなものであり、それを理由に減額や返金を求めれば、会社の評判を落としかねません。
大手企業は評判が悪くなると会社全体に影響を及ぼすため、デメリットも大きくなります。
ですから、クレームガード保証に加入していない場合に不具合や修復歴が発覚したとしても、基本的に自社のミスとして損失を受け入れるでしょう。
また、大手企業であれば社内研修やマニュアルといった教育システムも整っているはずであり、査定業務もしっかり行っています。
車の査定は人間が行うことなので、絶対にミスがないとは言えませんが、そもそも見落とす可能性自体が低いということです。
つまり、クレームガード保証に加入しなくても減額や返金を求められるケースは殆どないため、お金を払ってまで入る必要はありません。
クレームガード保証に入ったほうが良い場合はある?
基本的にクレームガード保証に入る必要はないですが、入ることを検討するとすれば、買取店と揉めるのが面倒な人です。
また、仮に揉めた場合に自分に非が無いということをはっきり言えない人も加入したほうが良いかもしれません。
査定後に不具合や修復歴が発覚した場合、最終的に買取店が折れるつもりでも、減額や契約解除の交渉をしてくる可能性は十分あります。
もちろん知る限りの車両情報をしっかり伝えていれば交渉に応じる必要はありませんが、そこではっきりと断れないと変な期待や誤解を与えてしまいかねません。
『もしかしたら知っていて隠していたのでは?』、『交渉次第では減額できるかもしれない』このように思われてしまうと、おそらく揉めて長引きます。
特に中古車の場合は自分が知りえない修復歴が隠れている可能性もゼロではないため、新車から乗っている場合に比べればトラブルに巻き込まれる可能性は高いです。
万が一の場合にやり取り自体が面倒だと感じるならクレームガード保証に加入しても良いと思います。
クレームガード保証に加入する場合の注意点
クレームガード保証に加入する場合、事前に料金を調べたり聞いたりしておけば、その分を含めて他社と比較ができます。
事前にクレームガード保証の料金を考えておかないと、せっかく比較して高く売れるお店を選んでも、結果的に他社より安く売ることになってしまうかもしれません。
また、クレームガード保証の料金は、ガリバーとビッグモーターでは違いますし、車種や買取額によって変わるので注意して下さい。
クレームガード保証の料金
クレームガード保証の料金は、ガリバーとビッグモーターで少し違いますが、大体5千円~3万円程度です。ガリバーの場合は、以下のように買取額によって料金が変わります。
ガリバーのクレームガード保証料金
- 10万円まで・・・4,900円
- 10~20万円・・・5,900円(6,900円)
- 20~30万円・・・6,900円(7,900円)
- 30~40万円・・・7,900円(9,900円)
- 40~50万円・・・8,900円(11,900円)
- 50~100万円・・・9,900円(14,900円)
- 100~150万円・・・11,900円(17,900円)
- 150~200万円・・・13,900円(20,900円)
- 200~250万円・・・15,900円(23,900円)
- 250~300万円・・・18,900円(26,900円)
- 300万円以上・・・21,900円(29,900円)
()内の金額は輸入車の場合で、国産車と比べて故障リスクが高いため、保証料金も割高です。
一方、ビッグモーターの場合はもう少しざっくりとしていて、買取額や車種で料金が変わります。
ビッグモーターのクレーム安心保障料金
- 軽自動車・・・10,000円
- 普通車(100万円未満)・・・10,000円
- 普通車(100万円以上)・・・20,000円
- 輸入車・・・30,000円
このように、それほど高い金額ではないですが、車種によっては買取額が数万円変わる可能性があります。
まとめ
査定後に修復歴や不具合が発覚することは人間が査定をしている以上ないとは言えません。
しかし、その責任をユーザーになすりつけることはお門違いであり、減額や返金に応じる必要は基本的にないでしょう。
これはJPUCや国民生活センターの見解を見ても明らかです。クレームガード保証を利用する必要もなく、過度に過度に怯える必要も一切ないので安心して下さい。
ただし、ユーザーは分かる範囲で不具合などについて伝える義務はあります。普段乗っていて気になる異音や不調なども隠さず話しておきましょう。
車を高く売るには他社との比較が必要で、一括査定を利用すると手間を最小限に抑えることができます。
下記の記事ではおすすめの一括査定を紹介しているので、興味のある方は参考にしてください。