車は高額な買い物ですから、購入する際にはローンを選択する方が多いでしょう。さらにその中には、残価設定ローンを利用するという選択肢もあります。
「月々の支払額が抑えられてお得ですよ!」なんて勧められることも多いですよね?
しかし、そんな言葉とは裏腹に残価設定ローンは損する場合も多いのです。
では、なぜ残価設定ローンは損なのか?その疑問に答えるために、残価設定ローンの仕組みやメリット、デメリットについてまとめてみました。
これから車を購入する方は参考にしてください。
車の残価設定ローンとは?
車の残価設定ローン、通称『残クレ』とは、予め数年後の価値が予測できる車ならではのローンと言えます。
通常のカーローンでは借りたお金を均等に分割し、返済していくのが普通です。(ボーナス払い無しの場合)
一方、車の残価設定ローンは、3~5年後に売却することを前提とし、その車の下取り価格に相当する金額を最終月の支払いに据え置いたプランです。
売却することを前提としていますが、実際には支払いの最終月に、
- 車を下取りに出して乗り換える
- 車を返却する
- 下取りに出さずに乗り続ける
という選択をすることができます。
乗換えや返却を選択すれば、そこで支払いは終了です。その車を乗り続けるという選択をした場合、下取り価格に相当する残債を精算する必要があります。
精算の方法は、一括で残りの金額を支払うか、再度ローンを組み、分割で支払うか、選べるようになっているのが一般的です。
少し分かりにくいので、例を挙げて説明しましょう。例えば、200万円の車を購入し、3年後に100万円の下取りができるとします。
この場合、36回目の支払い額を100万円とし、残りの100万円を35回で分割払いすることになります。
つまり、予め下取り価格を除いた分を分割で支払うことになるため、月々の支払いを低く抑えることができるという特徴があるのです。
残価設定ローンの審査は通常と変わらない
上記の例を見てもわかるように、残価設定ローンは、残価設定した分もローンに組み込まれています。
ただ単に支払い方法が変則的というだけで、下取り価格を除いた金額でローンを組むわけではありません。この点は、残価設定ローンの良くある誤解の1つです。
月々の支払額が低くなるので、ローンも通りやすいかと思うかもしれませんが、通常のカーローンと借入金額は同じなので、借入時の審査も基本的には変わりません。
銀行系のローンに比べれば審査は甘いですが、通常のカーローンが通らなくて残価設定ローンなら通るというケースは少ないと思います。
また、こちらも良くある誤解の1つですが、借入額自体が変わらないということは、金利分が少なくなるわけではありません。
ただし、残価設定ローンの金利は、通常のカーローンより優遇されていることも多くなっています。金利が優遇されているのであれば、その分の差はメリットの1つとも言えるでしょう。
車を残価設定ローン(残クレ)で買うデメリット
残価設定ローンはお得だと思っているでしょう。
しかし、その判断をするのは少し早いかもしれません。残価設定ローンを利用するかどうかは、メリットだけでなく、デメリットも理解してから決めるべきです。
乗り続ける場合は残価設定ローンだと損をする!
残価設定ローンは、確かに月々の支払いを抑えることが出来ます。
しかし、3年又は5年後も乗り続けたいならローンの最終月に大きな金額を精算する必要があります。
それまでにしっかりお金を貯めて一括払いができるなら良いですが、再度ローンを組む場合は損をする可能性が高いです。
なぜなら、残価分には既に3年、又は5年分の金利が掛かっているからです。つまり、わざわざ金利分が上乗せされた状態で新たにローンを組むことになり、2重に金利がかかることになります。
また、最終月の支払いを多く、月々の支払いを少なくするということは、最終月までに思ったより残債が減っていないということです。
長期間のローンになればなるほど、利息が大きくなるのは言うまでもありません。
いくら残価設定ローンの金利が優遇されているとはいえ、、これではトータルの支払い額は多くなってしまうでしょう。
一括精算するつもりでも、支払い期間中に状況が変わる可能性もあります。初めからその車を乗り続けるつもりなら、良く考えてどちらのローンを選択するべきか判断しましょう。
残クレの頭金は意味ない?
通常のカーローンであれば、頭金を多めに入れることで月々の負担が少なくなると同時に、金利による利息も減らすことができます。
残価設定ローンの場合も、頭金を多めに入れると月々の負担はかなり減りますが、残価設定した分はそのまま据え置きになります。残価設定した分には金利による利息が発生します。
ローン自体の総額は減っているので、残クレで頭金を入れる意味が無いわけではありませんが、わざわざ残価設定ローンを選ぶメリットは少なくなるといえます。
通常のカーローンと同様に残クレで頭金を入れるのであれば、後述する車のカスタムができない点や走行距離制限といった残価設定ローンのデメリットなどを考えると、通常のカーローンで購入した方がよいでしょう。
事故や走行距離で下取り価格が下がるリスクがある
残価を設定する際には、期間終了後の下取り価格を想定して決めます。
この下取り価格は保証されているので、相場状況などの影響を受けることはありません。(全てのメーカーで保証があるわけではありません)
しかし、万が一期間中に事故を起こしたり、車に傷をつけてしまった場合、下取り価格が下がります。
最初に設定した残価との差がある場合、返却や乗り換えを選択しても補填しなければなりません。
また、走行距離が多い場合も同様です。
走行距離は、1,000km/月や1,500km/月といったように選択できますが、それによって残価設定をしているので、オーバーすると下取り価格がさがるため、追加料金が発生します。
それ以外にも、喫煙やペットの臭いなども下取り価格が下がる要因の1つです。
このように、残価設定ローンで車を購入すると通常のカーローンで購入する場合より気を遣いながら車に乗らなくてはならないという大きなデメリットがあります。
特に事故で車が全損になれば、ローンだけが残ってしまうことになるので、必ず車両保険に入ることをおすすめします。
カスタムはどこまでできるの?
車が好きな方の中には、自分の好みにカスタムしたいと思う方も多いと思います。
しかし、残価設定ローンを利用した場合、基本的に車のカスタムはできません。してはいけないわけではないようですが、返却や下取りをする際には元に戻す必要があります。
元に戻せないカスタムをしてしまった場合や、カスタムした状態のまま返却や下取りをする場合は、査定額が減額される可能性があるので注意してください。
つまり、ローン期間終了時に追加で支払いが発生するかもしれないということです。
では具体的にどこまでカスタムができるのかについてですが、アルミホイールやマフラー交換くらいの改造でしたら純正パーツを保管しておけば問題ありません。
エアロパーツなどはビス止めのために穴を開けたりすることも多いので、購入する前に装着方法まで調べておき、元に戻せないカスタムになりそうなら辞めるという選択が無難です。
とはいえ、元に戻すのも結構な手間がかかりますし、お店に依頼するなら工賃も余計にかかります。車のカスタムを考えている方は、最初から通常のカーローンで購入した方がよいでしょう。
買取業者に車を売却した方が高く売れる場合が多い
残価設定ローンでは、最初に下取り価格を設定したうえで車を購入します。そのため、期間終了時に売却や返却を選ぶ場合、基本的にはその店舗で車を手放すことになります。
残価設定ローンは、残価設定した金額に保証を付けているケースが多いですが、これは逆に言うと下取り価格を低めに設定しているということになります。
なぜなら、相場より高く買い取ることになれば、損をするのは店舗側だからです。さらに、元々ディーラーの下取り価格は、買取専門業者などと比べて低い傾向にあります。
いくつかの業者で見積りをとる必要があったり、多少の手間はかかりますが、少しでも高く車を売りたい方にとって残価設定ローンは大きなデメリットとなるでしょう。
車が高く売れるということは、支払い額が少なくなることと同じ意味を持つので、結果的に通常のカーローンで購入した方が得をする場合も多いです。
残価設定ローンだと他社では売れない?
残価設定ローンでも、他社で売却したり、途中で売却することはできます。
しかし、車の所有権は店舗側にあるので、許可なく勝手に売却することはできません。
他で売却するには、一度買い取って所有権を解除する必要があるため、まとまった資金が必要になります。これは、通常のカーローンでも所有者が自分になっていない場合は同じなので注意しましょう。
車を残価設定ローン(残クレ)で買うメリット
先に残クレのデメリットをご紹介しましたが、もちろん残クレを利用するメリットもあります。
ここで一度、車を残価設定ローンで買うメリットを考えてみましょう。
月々の支払いを抑えることができる
残価設定ローンを利用することで、月々の支払いを抑えることが可能です。
どのくらいの差があるのか、例を挙げてみます。以下の場合は、200万円の車を金利3.9%、3年(36回払い)で購入し、3年後の下取り価格は100万円としています。
200万円の車を残価設定(100万)ローンで購入
・・・月々33,611円
200万円の車を通常のカーローンで購入
・・・月々58,959円
参考:ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト
このように、月々の支払いは約25,000円も違うことがわかりますね。実際には、車種によって3年後の下取り価格は違うため、ここまでの差は出ないかもしれません。
人気車種であればあるほど、残価設定の金額も大きくなります。
また、ディーラーなどの新車販売店では、残価設定ローンの金利が優遇されています。
そのため、通常のカーローンはもう少し負担が大きくなる可能性も高く、そう考えれば差はもっと広がるとも考えられます。
いずれにせよ、月々の負担が減ることは間違いありません。今まで購入できないと思っていた車種にも手が届くことになり、選択肢の幅が広がるというメリットがあります。
車検費用がかからなくなる
残価設定ローンは、3~5年で組むことが多く、3年で利用する場合、車検を受ける必要がなくなります。
初回の車検は故障なども少ないため、比較的安く受けられますが、大きな車になればなるほど負担も大きくなるでしょう。
走行距離が余程多くなければ、3年で寿命を迎える消耗品も少ないので、メンテナンスにかかる費用はオイル交換くらいです。
通常なら3年後にはある程度まとまった費用が必要になりますが、その分を次に購入する車の頭金にまわすことも可能になります。
ただし、次に購入する車にも重量税や自賠責保険などの費用は発生していることを考えれば、それほど大きなメリットとは言えないかもしれませんね。
出費を抑えながら定期的に新しい車へ乗り換えができる
残価設定ローンを利用すれば、月々の支払いを抑えながら、3年毎、5年毎に新しい車へ乗り換えることが可能です。
また、基本的には購入した店舗で買い替えることになるので、乗り換え時の手続きも比較的スムーズに行われます。
好きなメーカーがあって、モデルチェンジ毎に乗り換えたいという方や、修理費用などにお金を使うなら新しい車に乗り換えたいという方にはおすすめです。
その他、初めからある一定期間しか車に乗らないという方にもメリットはあるでしょう。
車は所有しているだけでも維持費がかかるので、期間が終了したら返却できるというのは良いかもしれません。リースに近い形で新車を低コストで乗ることができます。
そもそも残価設定ローンは何故あるのか?
残価設定ローンは、一見得なように見えますが、デメリットも多いことがお分かりいただけたでしょうか?
では、デメリットの多い残価設定ローンがなぜあるのかというと、一言でいえば車を売りやすいからです。
実際、月々の支払額が少なく見えれば、「これなら自分でも乗れる」と思う方は多いでしょう。
また、買い替えのサイクルが早くなり、その分車も多く売れるようになります。さらに、顧客の囲い込みもできるため、ディーラーなどの販売店側にはメリットが多いのです。
とは言え、残価設定ローンを利用する側にもメリットはあります。残価設定ローンと通常のカーローンを比較し、どちらが自分に合っているのか選択することが重要です。
残価設定ローンはどんな人に向いている?
最後に、メリットやデメリットを踏まえたうえで、どんな人が残価設定ローンに向いているかをまとめたいと思います。
残価設定ローンが自分に合っているかを判断するときの参考にして下さい。
残クレで得する人
残価設定ローンは、以下のような項目に当てはまる人が得する=向いています。
- 月々の支払いをできるだけ抑えたい
- 常に新車に乗っていたい
- 無理なく高級車に乗りたい
- 車の走行距離が少ない(年間1万km以下)
- 一定期間(3~5年)車が必要になる
- メンテナンスにお金をかけたくない
- 車をカスタムするつもりが無い
- 残価分を期間内に貯めることができる
- 数年後に環境が大きく変わる可能性がある
最後の環境の変化とは、引っ越しや転勤などのことだけではありません。
特に、結婚や出産を控えている方は、とりあえず残価設定ローンで車を購入するというのもアリだと思います。
今は小さな車で十分でも、家族が増えれば大きな車が必要になることも多いですからね。
残クレに不向きな人
残価設定ローンは、以下のような項目に当てはまる方には不向きです。
- 車を長く大事に乗りたい
- 車の走行距離が多い(年間1万km以上)
- ローンを払い続けたくない
- 残価設定分もローンで払うつもり
- 頭金を多く用意できる
- 売る時は少しでも高く売りたい
- 車のカスタムやドレスアップが好き
- 車に傷をつけたり、事故が多い
- 車内で煙草を吸いたい
- ペットと一緒に車に乗りたい
残価設定ローンを利用して乗り続ける場合、月々の支払いが安くなった分を貯金し、最終月に一括返済しなければ支払総額が上がる傾向にあるので注意しましょう。
車の利用を制限されることも多いので、車の自由度を高くしたいという方には、残価設定ローンは向いていません。
まとめ
残価設定ローンにはデメリットも多いですが、必ずしも損だというわけではありません。
自分にとって何が一番のメリットなのかを考え、デメリットが気にならないなら残価設定ローンを利用する価値はあると思います。
また、ローンの支払いを抑えるには、頭金を用意するのが一番良い方法です。今乗っている車があるなら、その車を売却して次の車に充てることもできます。
下取り価格が思ったより低かったという方でも、まだ諦めるのは早いです。買取専門業者なら、下取りより高く売れることも多いので、少しでも高く売りたい方は一度無料査定を受けてみましょう。