車の傷は、ある程度の傷でしたらコンパウンドで消したり、目立たなくすることができます。
しかし、コンパウンドの使い方を間違えると、車の塗装を痛めてしまったり、傷が余計に目立ってしまうこともあります。
そこで本記事では、コンパウンドの正しい使い方と、初めての方でも失敗しにくい「おすすめコンパウンド」を紹介します。
コンパウンドの選び方で迷っている方や、上手く車を磨くことができるか不安に感じている方は、ぜひ参考にしてください。
コンパウンドとは?
コンパウンドは、研磨剤のことです。車の塗装面の傷を消すためにコンパウンドを使用したり、劣化してくすんでしまった車の塗装を綺麗な状態に戻すときなどによく使われます。
そもそも、コンパウンドという言葉には「混ぜ合わせたもの」という意味があり、様々なものからなる化合物や混合物のことを意味します。
車のコンパウンドには、プラスチック(樹脂パーツ)用や金属パーツ用のコンパウンドがあり、形状も歯磨き粉のようなペースト状、さらさらした液体状のものまで様々です。研磨剤の粒子の大きさによっても種類が分かれています。
使用する場所や用途に合わせて適切なコンパウンドを選ぶ必要があります。
コンパウンドで車の傷が消える仕組み
コンパウンドを使用すると傷が消える仕組みは、コンパウンドで車を磨くことによって傷の深さまで周囲を削り、塗装面の凹凸をなくしているからです。
傷が消える仕組みを勘違いしていると、傷を埋めるためにコンパウンドを部分的に集中して使用するなど、間違ったコンパウンドの使い方をする原因になります。そのため、仕上がりが悪くなったり、失敗にもつながるので注意してください。
- 塗装されていない素地バンパーなどの傷は、基本的にコンパウンドで消すことが
- できません。
- 塗装面であっても深い傷を消そうとすると、傷の深さに応じて周囲を削ることになります。磨き過ぎると下地が出てしまう場合もあるので注意しましょう。
油性コンパウンドの使用について
コンパウンドによっては油性のワックスやシリコンなどが配合されているものがあり、油分が傷を埋めることはあります。
しかし、これは本来期待されるコンパウンドの効果ではなく、一時的に油分が車の傷を隠しているだけに過ぎません。
ですから、油性のコンパウンドを使用する際は、脱脂しながらの作業が必要になります。
車にコンパウンドを使用して効果がある傷の目安
では、コンパウンドを使用して効果がある車の傷とは、どの程度の傷でしょうか?
効果がある傷の目安としては、傷に対して垂直に爪でなぞった時に引っかからない程度の傷や、水を車のボディーにかけた時に殆ど目立たなくなる程度の傷です。
例えば、洗車傷や凹みを伴わない軽い擦り傷などはコンパウンドを使用して磨けば綺麗になるでしょう。
逆に、爪でなぞった時に引っかかってしまう深い傷や、塗装の色とは違う灰色や黒などの色(下地)が出てしまっている深い傷はコンパウンドでは消せません。
この後解説しますが、深い傷を無理に消そうとしてコンパウンドを使用すると、DIYでは手に負えなくなり、鈑金工場などに修理を依頼しなければならなくなる場合もあるので注意して下さい。
また、傷以外にも、車同士が接触して相手側の塗料がついている場合や全体的な色のくすみ、水垢などもコンパウンドを使用して磨けば改善可能です。
車の塗装は基本3層構造
車の塗装は、基本的に下地、ベースカラー(塗装の色)、クリア(透明な艶出し)の3層になっています。コンパウンドで消せる傷は、基本的にクリア層で留まっている傷だけです。
ベースの層で留まっている傷もコンパウンドで磨けば消すことはできますが、クリアの層を削ってしまうため、艶がなくなり返って目立ってしまうことも多くなります。
そうなってしまってからでは手遅れで、新たに塗装する必要がでてきてしまうので、鈑金工場などに修理を依頼することになるでしょう。
また、ベースの層を超えて下地が出ている傷の場合、コンパウンドで傷を消すことはできません。
塗装まで自分でする前提なら試しに挑戦してみるのも良いかもしれませんが、コンパウンドだけで深めの傷をDIYで消そうとするのはおすすめしません。
最近の車は特に塗装が薄くなっているので、コンパウンドで磨きすぎないように注意しましょう。
正しいコンパウンドの使い方と手順
コンパウンドと塗装の構造が分かったところで、早速車の傷を目立たなくするコンパウンドの使い方をご紹介します。
手順を追ってコンパウンドの使い方をご紹介していきますが、文章ではわかりにくい部分も多いと思います。
youtubeから分かりやすい動画を探してきましたので、動画で見たい方は下記を参考にして下さい。
参考動画:【モノタロウのコンパウンドで黒い車を磨く/水垢落としと洗車傷消しと鏡面仕上げ】
※動画は全体的なくすみをとる方法を紹介している動画ですが、傷を消す場合もやり方は基本的に同じです。
準備するもの
まず初めに、準備するものですが、
- コンパウンド
- 磨き用のスポンジや布
- 拭き取り、仕上げ用のクロス
- マスキングテープ
とりあえずこの4つがあればOKです。
広い範囲を磨くにはポリッシャーがあると便利ですが、小傷を消すくらいなら手磨きで十分です。コンパウンドは、必要に応じて数種類用意して下さい。選び方は手順と一緒にご紹介します。
磨き用のスポンジや布は、コンパウンドの種類毎に使い分けるので、いくつか用意しておきましょう。マスキングテープは、磨く場所以外にコンパウンドがつかないように保護するものです。
剥がすときも粘着剤などが残りにくいので、あると便利ですが、保護するようなものがない場合はなくても問題ありません。
ステップ1:コンパウンドを使用する前に車を綺麗に洗車する
車をコンパウンドで磨く前に、洗車をして汚れやほこりなどを水で洗い流しておきましょう。
汚れやほこりがあると傷も見えにくいですし、スポンジや布も目詰まりを起こしやすく、車を傷つけやすくなります。
また、鉄粉などがついていると、これも余計な傷がつく原因になりますので、粘土クリーナーなどをつかって除去しておきましょう。
鉄粉を除去すると磨き後の塗装面もツルツルになるので、仕上がりもよくなります。
ステップ2:マスキングテープなどでゴム部品などを保護する
車が綺麗になったら後はコンパウンドを使って磨いていくだけですが、コンパウンドがゴムやモール等につくと落としにくいです。
磨く場所の近くにそういった部分があるようなら、マスキングテープなどで保護し、コンパウンドが付着しないようにしておくと磨きやすくなります。
保護する部分が広い場合は新聞紙やビニールなどで覆ってからマスキングテープで止めると楽に保護できるはずです。
ステップ3:粗めのコンパウンドを使用して傷を消す
コンパウンドは、基本的に目の粗いものから徐々に細かいものへと変更して仕上げていきます。
最初に使用するコンパウンドは、
- 深めの傷・淡色車の場合・・・細目、極細目
- 浅めの傷・濃色車の場合・・・極細目
あたりがおすすめです。
各メーカーによって目の粗さの表記が違うこともあるので注意して下さい。
傷の程度によっては目の細かいコンパウンドだけでも消すことはできますが、段階を分けて磨いていくほうが時間もかかりません。
コンパウンドを使用して車を磨く際は、少量ずつコンパウンドを出し、狭い範囲を少しずつ磨いていくのが基本です。
ペースト状のコンパウンドなら1cm程度、液体のコンパウンドなら10円玉程度を目安にとり、磨く範囲全体に伸ばしていきます。
濃色車の場合は粗めのコンパウンドで磨くと塗装面が白く曇ったようになることがありますが、この後細かいコンパウンドで磨くと綺麗になるので問題ありません。
広い範囲を一気に磨こうとするとコンパウンドが乾いて残ってしまったりするため、失敗しないためにも、A4サイズ程度の範囲を目安に少しずつ磨いていきましょう。
ステップ4:目の細かいコンパウンドで仕上げる
傷が目立たなくなったら、目の細かいコンパウンドに変更して同じように磨きます。
使用するコンパウンドは、
- 仕上げ用
- 超微粒子
などと記載されているものがおすすめです。
淡色車の場合は、この段階で十分綺麗になると思いますので、ここで終わらせても構いません。もっと艶を出したいという方や、濃色車の場合は次のステップに進みます。
ステップ5:さらに細かいコンパウンドで艶出し
黒などの濃色車だと、仕上げ用だけでは塗装面に細かい傷が残っている状態で、少し曇った状態になってしまいます。なので、さらに細かい目のコンパウンドで磨いていく必要があります。
使用するコンパウンドは、
- 艶出し用
- 鏡面仕上げ用
などと記載されているものです。
使用するコンパウンドを変えているだけで、磨き方などは変わりません。磨き終わったらコンパウンドが残らないようにしっかりと拭き取りましょう。
ここまでやれば、傷も綺麗に消すことができ、塗装面も艶のあるピカピカの状態になるはずです。
失敗しない磨き方のコツ
コンパウンドを使用する際は、縦と横を交互に直線的に磨くようにしましょう。傷の部分だけにコンパウンドをかけるのではなく、その周囲も一緒に磨いていくと綺麗に仕上がります。
ある程度磨いたら一度ボディーに残ったコンパウンドを拭き取り、傷の状態を確認しながら作業を進めていくと失敗も少ないはずです。
ちなみに、コンパウンドやワックスがけの際に円を描くように磨く方もいますが、ムラができる原因になったり、磨き傷もつきやすくなるので辞めましょう。
間違った磨き方は傷が上手く消えなかったり、コンパウンドを使用したことによって塗装面に細かい磨き傷が目立ってしまう場合もあるので注意して下さい。
手磨きでコンパウンドを使用する場合、時間がかかるというデメリットはありますが、下地が出てしまうなどの失敗も少ないというメリットもあるため、初心者の方には特におすすめの方法です。
コンパウンドで広い範囲を磨く際はポリッシャーを使用することも多いですが、ポリッシャーを使用したからといって傷が消えるわけではありません。
ちょっとした擦り傷なら手磨きで十分なので、まずは手磨きでやってみることをおすすめします。
コンパウンドに使用するスポンジや布の選び方
磨き用のスポンジはできるだけ目が細かく、保水性の高いものを選ぶと良いです。
カーショップなどでも『コンパウンド用』のスポンジが販売されていますので、そういったものを選べば間違いないでしょう。
スポンジでなくてもネル地の布であれば、車を傷つけにくく、磨きにも適しています。
広範囲を磨くならスポンジ、狭い範囲や磨きにくい場所は布で磨くといったように使い分けると便利です。最後に、仕上げ用のクロスですが、特にこだわりがなければ磨き用の布でも問題ありません。
ただし、コンパウンドを使って磨いた布ではなく、拭き取り用として新しいものを用意しておきましょう。
コンパウンドを使用する際の注意点
コンパウンドで車を磨くときの注意点ですが、直射日光の当たる場所は避けて作業を行いましょう。
車のボディーが熱を持ち、コンパウンドが直ぐに乾いて思ったように削れなかったり、傷がつきやすくなります。
また、一番気をつけなければいけないポイントは、角を磨く場合です。
平らな部分は均等に力がかかりますが、角は一点に力がかかりやすく、思っている以上に削ってしまい、下地が出やすい部分です。
手磨きの場合はそれほどすぐ下地がでることはありませんが、ポリッシャーを使う場合は細心の注意を払ってください。
最近の車は丸いから角なんてないよ・・・なんて思う方もいるかもしれませんが、ドア一枚見ても分かるように、平面だけのパーツなんてほとんどありません。
パッと見は平らでも、良く見たら少し角度がついて角ができている場合もあるので、磨く部分を事前にしっかり確認しておきましょう。
最後に、どんなコンパウンドを使用したとしても、クリア層を削っていることには変わりありません。コンパウンドを使用した後は、コーティングやワックスなどで塗装面を保護してあげましょう。
車の傷消しにおすすめのコンパウンド4選!
最後に、初心者でもプロ並みの仕上がりが簡単にできるおすすめのコンパウンドを3つご紹介します。
コンパウンド選びで迷っている方は是非参考にしてください。
ソフト99 99工房
ソフト99は、創業から50年以上続くカーケア用品の老舗で、カーショップなどに行けば様々な商品が並んでいます。
良く見かけるガラコなんかもソフト99の商品で、一度は使ったことのある方も多いのではないでしょうか?
一般ユーザー向けの商品からプロ仕様の商品まで幅広く展開しており、信頼できるメーカーの1つです。
99工房は、ソフト99の中でも人気のブランドで、車の傷を補修するためのコンパウンドも多くそろっています。
カーショップやホームセンターに足を運べば、必ずと言って良いほど置いてあるはずなので、手に入りやすく、おすすめのブランドです。
99工房のおすすめ:液体コンパウンドトライアルセット
出典:Amazon
99工房のコンパウンドは、使い方も簡単で、一般ユーザーにも分かりやすくなっています。特におすすめのコンパウンドは、『液体コンパウンドトライアルセット』です。
粒子の大きさが違う3種類のコンパウンドと、専用スポンジ3つがついたセットなので、これさえあれば車の傷を消すために必要な道具が殆ど揃います。
コンパウンドやスポンジをを1つずつ購入すると、意外と費用がかかってしまったり、コンパウンドが大量に余ってしまいます。
特に目の粗いコンパウンドは、傷を消すときくらいしか使用しないので、少量あれば十分です。
この『液体コンパウンドトライアルセット』なら、価格も2000円程度と安く、大量に余ってしまうこともありません。
初めてコンパウンドを使って傷の補修をする方や、コンパウンド選びで迷ってしまっている方には特におすすめの商品だと思います。
3M
3Mは、100年以上続くアメリカの企業で、日本法人ができてからも50年以上の歴史がある科学、電気素材メーカーです。
自動車だけでなく、家庭で使う掃除用のスポンジや文房具などの幅広い分野で3Mの商品を見かけることも多いはずです。
業務用としてしても有名なメーカーなので、車業界でも3Mの製品は多く使われていて、私が以前勤めていた鈑金屋でも馴染みのあるブランドです。
3Mのおすすめ:ハード・1/ハード・2
出典:Amazon
3Mのコンパウンドはプロ仕様の製品なので、しっかり研磨できて仕上がりが良いと一般のユーザーからも評価が高いです。
特におすすめのコンパウンドは『ハード・1』で、超硬研磨粒子を使用しているため、極細目でありながら手磨きでもしっかり研磨できます。
淡色車向きなので、濃色車であればより細かい粒子の『ハード・2』の方がおすすめです。
使い方と注意点など
どちらもこれ1本あれば仕上げまでできてしまう優れたコンパウンドですが、ハード・1で磨いた後、ハード・2で仕上げるといった使い方もできるので、両方あると便利でしょう。
ただし、ポリッシャーを使う場合は下地が出ないよう注意してください。3Mのコンパウンドは基本的に業務用なので、カーショプやホームセンターでは殆ど見かけないかもしれません。
また、通常のサイズは750mlと大きすぎるため、値段も高くなってしまいますし、一般の方は使い切れないでしょう。
少し割高にはなってしまいますが、100mlのハード1、ハード2がセットになった商品がAmazonにありましたので、プロ仕様のコンパウンドが欲しい方は試してみて下さい。
Holts(ホルツ)
ホルツはイギリス発祥のメーカーで、国内でも車の補修用ケミカルなどの商品が人気のブランドです。
ホルツは車を持つユーザーの長く乗り続けたいという想いに応えた商品を販売、開発をしており、一般ユーザー向けのDIY商品が多くなっています。
カー用品店やホームセンターなどでも販売されているので、馴染みのある方も多いでしょう。
ホルツのおすすめ:液体コンパウンド リキッドコンパウンドミニセット
ホルツのコンパウンドの中でも、3つの液体コンパウンドがセットになった商品。小傷などの修復には量の多いコンパウンドは必要ないため、初めて傷消しに挑戦するならとてもおすすめのコンパウンドです。
既に紹介したソフト99の商品と同じように便利で使い勝手も良いですが、ホルツのセットはコンパウンドのみなので、別途スポンジやクロスなどの準備は必要になります。
超極細のコンパウンドは0.2ミクロンと粒子がとても細かく、口コミでも傷やくすみがきれいになったと評判が良いので、ピカピカに磨きたいという方にもおすすめです。
PiKAL
日本磨料工業が製造しているPiKAL(ピカール)は、金属部分を磨くピカール液が有名なブランドで、古くから様々なところで親しまれています。
意外と知られていませんが、車の塗装面を磨くコンパウンドも数種類販売されていて、手頃な価格と手に入りやすいことからコスパが良いと評判です。
PiKALのおすすめ:ラビングコンパウンド
出典:Amazon
PiKALのおすすめコンパウンドは、ペーストタイプの『ラビングコンパウンド』です。
塗装面だけでなく、ホイールやアルミパーツに使用する方も多く、ペーストといっても半練りタイプなので固すぎず、使いやすいコンパウンドになっています。
少々蓋が開けにくいというマイナス面はありますが、とにかく価格が安いのとホームセンターなどでも購入できるところが魅力です。
中目~中細目程度と比較的粒子が荒いので、他のコンパウンドでは傷が消えなかったという方は、こちらのコンパウンドを試してみると良いでしょう。
ただし、磨き過ぎると下地がでる可能性があるので使用する際は注意して下さい。
ラビングコンパウンドの使い方
ラビングコンパウンドの使い方は基本的に他のコンパウンドと同じですが、使用後に仕上げ用のコンパウンドで磨く必要があります。
塗装面に使用する際は、必ず仕上げ用のコンパウンドも準備してから使用しましょう。
まとめ
いかがでしたか?コンパウンドを使って車の傷を消したい方は、傷の程度にあったコンパウンドを選び、是非挑戦してみてください。
手磨きでやる分には、しっかり傷の状態を確認しながらやれば、そこまで神経質になる必要はないと思います。失敗しないためにも、根気良く少しずつ磨いていくのが綺麗に仕上がるコツですよ。
コンパウンドで車を磨いた後は、コーティングやワックスなどで塗装を保護することも忘れずに行いましょう。
また、コンパウンドは車のボディーだけでなく、ヘッドライトの曇りや黄ばみの除去にも効果的です。
重度の黄ばみも耐水ペーパーとコンパウンドを使えばピカピカになるので、是非試してみて下さい。ヘッドライトの曇りや黄ばみについては、下記の記事にまとめてあります。